
とうとう『ナツノクモ』の最終巻が出てしまいました。楽しみにしていた作品だったんで、悲しい限りです。ただ、全八巻で過不足なくまとまっていますし、八冊程度ならオススメもしやすい数です。そういう意味では、引き際の良い作品でもあります。
舞台は、オンライン世界。ネット上にある3D空間で、キャラクターたちが生活してます。UOの世界をより高いテクノロジーで実現させたものぽいです。そこでユーザーはダンジョンを攻略したり、商売をしたり、ギルド作ったりします。

主人公(上のおっさん)はゲーム内では伝説的な武名を持つエンジン男という人なんですが、現実ではゲームにはまり込んだせいで家庭を崩壊させた一児の父親です。まともに仕事もしなくなった彼は、ネット上で用心棒をやり、何とか生計を立てています。

そんなエンジン男ですが、ネットの相棒(上の画像の人)からある仕事を持ちかけられます。オンライン上でアバターを使ってカウンセリングを行うことで、精神的な病を治すサークルというものがあり、その仕事を手伝うという仕事です。立派な廃人としてゲームに勤しむエンジン男が、精神を病んだ患者を救うのです。
……という感じです。上の解説だと暗めの話のように思えるかもしれませんが、実際はバトルアクションが多めで、テンポの良い明るい作品です。だからこそ、そこに描かれている重いテーマが強く打ち出されているのかもしれません。
この作品は、読み手を選びます。マンガ自体はすごく面白いのですけど、ある感性がなければ、テーマが理解できないのです。そして、テーマが理解できなければ、バトルアクションとしては面白くとも、作品を理解できなくなっています。
その感性とは、ネット上にあるデータに強い思い入れを持つことができるか、というものです。一般人的感覚では、ネット上のデータに感情移入はできないのだと思います。それはたかだかデータであり、指先一つでコピー可能な代物です。多少の感情を持てたとしても、すぐに捨て去れるだけのものでしかないでしょう。
しかし、俺を含め、ネット上で活動している人間にとって、データは思い入れの塊です。一日一時間かけてテキスト書いてる人間にとってみると、たかがデータとは考えられません。それに、ゲームのようにコピー可能なものにだって、感情移入はできてしまえるのです。
例えば、不思議なダンジョン。あのシリーズでは主人公のレベルが上がらない代わりに、武器や防具の強さや特性を上げていくシステムになっています。自分の鍛え上げた装備は相棒も同然で、それがデータをいじれば作れてしまうにしろ、思い入れはあるのです。
『ナツノクモ』のテーマとは、データに思い入れを持つことは正しいのか。そして、データを介して交流する人間同士に芽生える感情は正しいのか。この二つです。だから、感性がなければ理解ができない代わりに、感性がある人にとっては興味を持たざるを得ない作品なのです。
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