最近はライトノベルと一般文芸の境目がずいぶんなくなってきましたね。一般文芸が中高生に受け入れられてるというより、中高年がライトノベルに抵抗を持たなくなってきたんですかね。一般文芸のレーベルからライトノベルを思わせる作品が刊行されてます。
そのせいか、最近はライトノベル以外の作品がコミカライズされることが多い印象があります。それも『YM十』のような活劇や『三国志』のような時代物じゃない。もっと、ポップでライトな一般文芸のコミカライズです。

例えば、こちら。乙一の同名小説をコミカライズした『GOTH』。ごく淡々とした、人間としての感情の薄い主人公の青年。それと、非常に激しい感情を持ち合わせていながら、ある事件がキッカケで感情を外に表現しなくなった少女。
彼ら二人は人が死ぬこと、殺人事件、不可解な出来事に強い興味を持っています。新聞に凶悪事件が載れば、切り抜き、話し合います。町で殺人事件が起きれば、その謎を解くべく調査をするのです。原作のスリリングでありながら、冷静で冷淡な文体がコミカライズにも上手い具合に反映されています。

こちらも、そうですね。米澤穂信の『春季限定いちごタルト事件』。小市民シリーズと呼ばれるシリーズの一つで、続巻に『夏季限定トロピカルパフェ事件』があり、もうそろそろ『秋期限定マロングラッセ事件』も出る予定です。
小市民シリーズの主人公は、小鳩常悟朗。どんな事件でも首を突っ込んで、得意げに探偵してしまう性癖の持ち主です。その性癖ゆえに手痛いしっぺ返しを食らった彼は、探偵することを封印して、小市民たろうと努力しています。ヒロインである小佐内ゆきも、やはり小市民を志す一人です。彼女にも隠したい本性があるのですが、それは原作を読んでのお楽しみということで。

森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』。森見登美彦さんは良くも悪くも、同じような作品を量産するタイプの作家さんです。分かりやすくいうと、あだち充と『タッチ』みたいな関係ですね。あだち充がマンガを描くと、なんでも『タッチ』になってしまいます。どんだけ新連載として売り出しても、変わんない。しかも、面白い。森見登美彦はそんな作家さんです。
森見登美彦に出てくる主人公は、モテません。十中八九持てないばかりか、自分がモテないことを自覚している上に、ひがんでいます。そして、主人公が頑張ってヒロインに猛烈アタックしようとすると、なぜか超常的な出来事が起きて、失敗します。
舞台は昔話やおとぎ話、童話のような奇妙な世界です。例えば、大量の蛾が飛んできたり、自転車にこやか整理軍が出てきたり、最近ちょっと流行ってる図書館警察が出てきたりするのです。どこか懐かしいけど、非現実な物語が展開されます。本当にライトノベルといって差し支えないですね。

つい一昨日辺りに発売された藤野千夜の『ルート225』もそうですね。藤野千夜さんは個人的には青春小説の人というイメージが強いです。『ルート225』のコミカライズを担当されているのは『放浪息子』や『青い花』でお馴染みの志村貴子さんです。
『ルート225』というのは、国道の番号である同時に、数字もあります。225に√(ルート)の計算をすると、15と−15という二つの数字が導き出されます。答えが二つ出てくるのですが、どちらも正解です。そして、よく似た数字ですが、決して同じ数字ではありません。
主人公であるエリ子とダイゴはごくごく普通の姉弟です。二人は家に帰る途中で、奇妙な世界に迷い込みます。同じ名前の友人の性格が、全然別になっていたり。死んだはずの少女が生きていたり。ほとんど同じなのに、少しだけ、決定的に違う。まるで、ルートの世界なのです。たった一枚のテレホンカードだけが、元の世界の連絡口になっています。はてさて、二人はどうなってしまうのか。
原作の『ルート225』はライトノベル的な色彩が強いわけではありません。どちらかといえば、青春小説であり、一般文芸の作品という感じですね。このコミカライズは原作者である藤野千夜さんの要望で、志村貴子さんのコミカライズ依頼がされたということですから、上三つとはちょっと経緯が違ってるんですね。
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