■発狂小町が面白い
発狂小町
『発狂小町』というブログがあります。読売新聞が主催している「発言小町」というサービスがあります。「教えてgoo」や「はてな人力検索」に近いシステムで、誰かが一つの質問のトピックを立てます。すると、参加者がトピックに参加して、書き込みをしてくれるサービスなんです。
ところが、不思議なことに、「発言小町」は脇の甘い方が多いのです。ネットをやっていると、自然と情報に対して敏感になります。「こんなことを書いたら、叩かれるな」ということを察知して、書きません。ところが、「発言小町」ユーザーのごく一部はやばいことでも平気で書いてしまうので、見ていて非常に楽しいのです。
冒頭にリンクを置いた『発狂小町』というのは、その「発言小町」から面白いトピックを抜き出して、まとめてアップロードするブログなのです。2chの書き込みをまとめるのが2chブログと呼ばれていますから、『発狂小町』は小町ブログなわけです。
■嫌えない彼女
覗く友人 - 発狂小町
『発狂小町』の最近のエントリで特に面白かったのが、「覗く友人」というトピックをまとめた記事です。親しい友人を部屋に招くのが好きなトピック主なのですが、何故だか友人たちはトピック主の寝室を覗きにきます。「どうしたら、覗かれないようにできるでしょうか?」というのが、彼女の質問でした。
ところが、トピックに集まった人々がトピック主に話を聞いていくと、そこにはちょっと不思議な関係のあることが分かってきます。例えば、終電のなくなった友人が部屋に押しかけてきている。友人たちは材料費も出さずに手料理を要求して、片付けもせずに泊まり、帰っていく。そのことを不満に思うものの、強く言い出せないトピック主。どう考えても、利用されています。
トピックに集まった人々が「それは異常だ」とか「舐められている」と繰り返すうちに、トピック主の方も状況を理解します。そして、とうとう「勝手に寝室を覗きにくることでストレスが溜まっている」、「家でパーティを行うことはしない」と友人たちに宣言します。ほとんど益のない友人たちは去り、親身になってくれる友人だけが残り、全ては万々歳に思われました。
ところが、ここからどんでん返しが始まります。映画でいえば、最後の十分に結末が変わってしまうくらいのことです。トピック主は大量の友人が一挙にいなくなったことで、多少精神が不安定になります。そして、友人を粗製濫造してきたことを、こう語るのです。「自分は他人を嫌うことができないのだ」、と。
トピック主は言います。「私はいつでも他人のことを考えているのです」、「何をどうすれば他人が喜んでくれるのか」、「そのことが自分の指針であり、友人がいなくなった今、何をすればいいのか分からない」と。
ここで、唐突に『発狂小町』の記事は終わっています。トピック主がトピックに書きこむことを止め、新たに発言を書くことのできないようにしてしまったようなのです。全てが上手くいったかに思えた矢先でしたので、非常にショッキングな終わりです。
■愛せない彼女
愛すべき娘たち
この記事を読んでいて、僕は一つのマンガを思い出しました。よしながふみがジェットコミックスから出した、『愛すべき娘たち』という単行本です。本来はボーイズラブが本業の作家であるよしながふみの描く、大人の女性向けのマンガです。
この作品は全五話の短編集です。それぞれに少しずつ関係のある女性を主人公にし、彼女たちの持つコンプレックスを描いていく手法を取っています。第一話と第五話に強い関連性を持たせていますが、基本的には別々に完結した作品となっています。
このマンガの第三話に、誰をも愛せない女性が登場します。見目も良く、性格も良い。結婚願望がないというわけでもなく、仕事が恋人であると頑張っている風でもありません。何らの非もない彼女ですが、不思議なことに結婚ができません。
叔母の勧めによってお見合いをする彼女ですが、誰に会っても首を縦に振りません。例えば、非常に有能だけれど、心に優しさがほんの少し欠けている男。一見すると優しそうなのだけれど、働く女性に理解のない男。それぞれに欠点もあるのですが、悪いだけでもない。つまり、彼らは人間なのです。
見合いから二度目に繋がることのない彼女ですが、ついに心惹かれる男性に出会います。事故で障害を持ってしまい、大きな声や自由に動かせる足をなくしてしまった男性です。彼は主人公と好みがよく似ており、非常に美しい心を持っていました。結婚するのなら、こんな男性がいい。そう思える相手でした。
ところが、彼女は彼をも断ります。見合い自体を断り、結婚という考え自体を取り止め、ついには修道院での生活を選ぶのです。彼女はどんな相手に対しても優しく、穏やかに接することができます。しかし、誰かただ一人だけを愛することはできないのです。彼女はそのことに気づいてしまったのです。
■愛があっても、上手くいかない
事実とマンガを比較するのはおかしいかもしれませんが、世の中は上手くいかないな、と思います。他人を嫌うことのできない『小町』の方は、他人のことを考えすぎるあまり、自分の幸せが分からなくなりました。たった一人だけを愛することのできない『愛すべき娘』は、日常の生活に限界を感じてしまいます。模範的で道徳的な人は、突き詰めれば、幸せにはなれないものなのかもしれません。
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