失敗し続けるコメディ調マンガ 『ネムルバカ』

2008年03月24日 23:14

 『ネムルバカ』読みました。いやー、相変わらず、石黒正数先生のマンガは面白いですね。ギャグマンガって基本的には狙ってるじゃないですか。例えば、『ジャガー』なんか、完全に笑いどころを計算して描かれてます。ほとんど数式を解くみたいな感じで、「○○を××すれば笑える」という仕組みを使ってます。

 ところが、石黒先生のマンガは計算がないんですよね。例えば、『それでも町は廻っている』はギャグマンガというかコメディマンガで、笑いどころがいっぱいあります。あるんですけど、その笑いどころは計算で生み出されたものじゃないんですよね。狙って描いているのかもしれないんですけど、その狙いがストレートではないんですよ。

 野球でいったらストレートじゃない。かといって、じゃあ、変化球というわけでもないんです。そこが不思議なところで、そもそも野球してないんじゃないかという恐れすらあります。野球に見えるんだけど、サッカーだったりするのかもしれないです。どういうことかというと、読者は「ギャグもしくはコメディだな」と思って読んでいるんだけど、実は石黒先生の頭の中では「超シリアス調」なのかもしれないんです。そのギャップが、実は面白さの源なんじゃないかな、とか。

 で、本作『ネムルバカ』でも、そんな面白さは十分入ってます。どじっ娘仕様のカーナビのせいで、自動車事故を起こしたり。飲食店の店員に偶然街で会って、ストーカーだと思って逃げ出したり。全体的に、そこはかとなくコメディ調なんです。

 だから、『それでも町は廻っている』を好きな人には躊躇なくオススメできる一冊です。ただ、一点違うのは、『ネムルバカ』はシリアスな作品だ、ということです。そう、驚くべきことに、真面目なんです。全体的に、ゆるくて、アホで、ぬるい感じなんですが、ストーリーマンガなんですよ。

ネムルバカ (リュウコミックス)
ネムルバカ:石黒正数


 基本的に、『ネムルバカ』は失敗し通す話なんですよ。上は主人公の一人である女子大生。田舎から出てきたばかりで、親から離れた生活にも慣れておりません。女子寮に住んでいて、童顔の先輩と共同部屋です。で、上は、セットしたお釜の取っ手を不用意に持ったばかりに、中身を盛大にぶちまけたシーンです。うーん、大失敗。

ネムルバカ (リュウコミックス)
ネムルバカ:石黒正数


 で、こちらが同室の、童顔の先輩。インディーズのバンドをやっておりまして、本気で音楽で飯を食っていこうと志している少女です。上は、苛立ち紛れにモノを蹴りつけたら、思いのほか力が入っちゃったところです。自業自得の好例ですね。

ネムルバカ (リュウコミックス)
ネムルバカ:石黒正数


 そして、こういう失敗というか災難が降りかかるのは主人公たちだけではないのです。このおっちゃんは公園でゴルフの練習をやっとりました。公園でのゴルフ練習は、球がどこに飛んでいくのか分からんので禁止のところもあるわけで。このおっちゃんは「ゴルフ練習禁止」の立て札を無視して練習していたところ、どこからともなくボールが直撃したのです。

 繰り返しますが、『ネムルバカ』はギャグ調、コメディ調のマンガです。と同時に、最初から最後まで、誰もが失敗を繰り返すというストーリーマンガでもあります。この奇妙な組み合わせは、はまりますよ。なんだろう。初めて塩ようかんを食べた時のような、不思議な気持ちになります。


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