『よつばと』読み返してました。キャラクターが可愛いとか、自然であるとか、懐かしい空気とか、そういったものがフィーチャーされがちです。けど、あずまきよひこ先生のすごさは、もっと基本的なとこですよね。もし、仮に台詞が一個もなかったとしても、絵だけで内容を表現できる。その見せ方が、すごく上手いんです。
 よつばと!:あずまきよひこ
例えば、7巻のワンシーン。よつばや恵那、みうらが糸電話を作って遊ぶ回です。糸電話をauと言って、A999ZXなんて、いかにも子供が選びそうな型番を名づけさせてみたりします。一通り遊び終わった小学生軍団は、綾瀬家と小岩井家を糸電話で結ぶことを考えます。
紙コップを、どうやって小岩井家まで通すか。紙コップは軽いですから、フワフワして投げられません。でも、鉛筆や本なんかに巻きつけて投げたら、確実にガラスを割ります。そこで、風香のぬいぐるみを使って、小岩井家の窓まで投げ飛ばす作戦に出ます。
「ヒュン」という軽やかな文字が、みうらのためらいのなさをよく表していると思います。「ホントに投げていいのかな」なんて遠慮があれば、こんな文字にはなりません。「さあ、飛べ」という気概があったればこその、「ヒュン」です。
 よつばと!:あずまきよひこ
で、こっちが投げ終わった後。恵那とみうらがうなだれてます。いえ、うなだれてるんじゃなくて、窓の下をのぞいてるんですね。風香がほとんど同じ状態で描かれているので気づきにくいですが、色々な部分がさりげなく描き換えられています。
二枚の画像を比べてみると、一枚目はキャラクターではなくて、窓を中心に描かれているのが分かります。右端のカーテンはまとまっていますが、左のカーテンはだらっと斜めに下がっています。ところが、二枚目の画像では、窓は半分くらいしか描かれず、左端のカーテンもまとめられています。恵那が下をのぞくためにまとめたのでしょう。そして、絵の中心が左にずれたことによって、恵那とみうらの背中の丸さが強調されているのです。
あずまきよひこ先生は、たった二枚の絵を使って、たった一つのことを表現しています。しかも、たった一つのことを表現するためだけに、様々な手がかりやヒントを描き、そこに多くの想像の余地を作っています。物語上においては、たった数秒のことなんですけど、そこにものすごくたくさんのことが詰め込まれているんです。すごいよなぁ。
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