■電車内マンガのススメ
電車でマンガを読むのにハマっております。朝、本棚から一冊のマンガを抜き出すんですね。重くもなければ、軽くもない。シリアスなものでもないし、ギャグでもない。そういう一冊です。例えば、『ナツノクモ』は重くてシリアスなので、電車の中では読めません。だって、うっかりしたら乗り過ごしちゃいます。逆に、『ハチワンダイバー』のようにスピード感のあるものや『ボーボボ』みたいなギャグもダメです。だって、行きの電車で読み終わっちゃったら、帰りにすることなくなっちゃいます。
だから、適度に明るくて、じっくりゆっくり読めて、読後感の良いものを選びます。朝ですから、マンガ一冊選ぶのに長々と時間を使ってられません。五分あったら、歯磨きできますし、洗い物も済んじゃいますし、トイレだって済ませられちゃいますからね。瞬間的で、直感的に、読むマンガを決める能力が必要です。
なぜ、電車の中でマンガを読むかといいますと、僕は電車が好きじゃないんですね。電車という乗り物は嫌いじゃないんですが、そこに乗っているのが憂鬱なんです。朝起きた瞬間から家を出るまでは考える暇もないですし、電車を降りた後も考えてる時間なんてありません。でも、電車の中ってやることもないので、自然と頭が回っちゃう。「なんで、こんなギュウギュウなんだろう」とか「もう家に帰りたいなぁ」なんて思っちゃうわけです。
そんな時に、マンガです。それも、すごく面白くて、気持ちの軽くなるようなマンガを読むわけです。すると、息苦しい電車内であることも忘れて、電車を降りた後のことも一切考えずに、楽しく過ごすことができるわけです。これは、すごく楽しいですよ。
■『庭先案内』

電車で読むオススメ一冊目は、須藤真澄さんの『庭先案内』です。ジャンルを説明するとしたら、ファンタジーかSFといったところでしょうか。もっと正確にいえば、現代を舞台にしたおとぎ話のようなマンガです。
例えば、ある村の温泉に浸かると、髪の色が赤や紫に変わってしまう。自然に髪が染まるので、おじいちゃんから子供までカラフルな頭をしています。どうしてなんだろう、と調べていくと、なんと三人の鬼が垢を温泉に降り注いでいたからなのです。村の景気を良くしよう、と鬼たちが頑張った結果だったのです。
絵柄もかわいいし、お話もすごく素敵で、不思議なものばかりです。同じ話を何度読んでも飽きることがないのもいいですね。だって、万が一行きの電車で読み終わっちゃったとしても、最初からもう一度読み返せますからね。
■『群青学舎』

二冊目は、入江亜季さんの『群青学舎』です。こちらも複数のエピソードが詰まった短編集になっています。田舎の学校が舞台だったり、中世ヨーロッパを思わせる世界が描かれることもあります。そういう意味での統一感はないですね。
ただし、一作でも読めば分かるんですが、作家さんに強烈な個性があるんです。少年マンガとも少女マンガとも違う、独特の線の絵柄です。それに色々なエピソードがある中でも、何かを良いといったり悪いといったり。そういう主張もほとんどない。叙事詩というのでしょうか。出来事をあるがままに切り取ったような作風なんです。
このマンガも、何度読んでも飽きません。話が素晴らしいのもあるんですが、その絵の詳細さや書き込みの量がすごいというのもあります。丹念に目を凝らしてみると、毎回何かしらの新しい発見が得られます。こんなところまで書き込まれているんだ、という驚きがあるんです。
■『よつばと』

そして、最後は、言わずと知れた『よつばと』です。あずまきよひこさんが電撃大王で連載されてる作品ですね。五歳児の元気っ子のよつばが、新しい世界を縦横無尽に駆け回ります。我々が見慣れたものでも、よつばにとっては見るもの全てが新しいのです。
例えば、「花火大会」という言葉を聞いて、よつばは「大勢の人が手持ち花火を振り回して遊ぶ」姿を想像します。そして、本当の花火大会に行って、巨大な花火が撃ちあがる様を見て、感動します。僕も昔はこんなに感動したんだろうな、と思うと懐かしくて、ちょっと悲しいですね。
よつばの視点で過ごしてみると、すごく楽しいと思うんです。どんなことでも感動して、驚いて、楽しめる。『よつばと』を読んだ後は、しばらくの間は、よつばのように感じられるような気がするんです。だから、電車で憂鬱な気分を吹き飛ばすには、一番なんです。
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