■趣味は価値ではないけれど
ライトノベル愛読者が理解できない
どこから見た記事だったのか、viaがはっきり思い出せません。
まず、ばっさり切っちゃいますと、趣味に理由はいりませんね。例えば、サッカーや野球のようなスポーツは「体を鍛えられる有意義な趣味」と考えられがちです。でも、自動車や電車での移動が主流の現代において、体を鍛えるメリットそのものがないです。
じゃあ、新書や専門書を読むのは有意義でしょうか。それはケースバイケースですね。例えば、数学者が数学の本を読むことは有意義だと言えます。しかし、電車の駅員さんが美術書を読むことは何ら有意義ではありませんね。彼の仕事の役には立たないんですから。
でも、趣味って、そういうものですよね。お酒は脳細胞を破壊しますけど、みんなで騒ぐのは楽しいです。芥川の小説なんか、人生に悪影響を与える可能性の方が高いと思いますけど、楽しいのです。楽しいってことは、理由じゃないですね。
そして、上記を前提としまして。あえて、有意義なライトノベルをオススメしましょう。
■『狼と香辛料』で経済を学ぼう

アニメ化しまして、コミックも順調な売行き。超有名と呼んで差し支えないライトノベル『狼と香辛料』です。『狼と香辛料』は流浪の旅商人ロレンスが主人公の経済小説です。村で余った小麦を仕入れ、別の村で毛皮に換え、今度は都会で鎧に換える。ロレンスはモノとモノ、金と金を交換することで日々を生きています。
ヒロインのホロは賢く、可愛い狼の娘です。耳と尻尾はケダモノですが、頭の中身は神様のように澄み切っています。ロレンスの商売に首を突っ込み、ちょっとした取引から莫大な利益を上げさせてしまいます。かわいいだけではないのです。
『狼と香辛料』を一冊読めば、貨幣レートや商売の仕組みなんかが、はっきり簡単に分かります。もちろん、小説は現代で使われている経済より簡単なモデルになっていますけど、基本は一緒です。小学生でも分かる文章で、楽しく簡単に経済のお勉強ができてしまいます。
■『終わりのクロニクル』で戦後を学ぼう

知る人ぞ知る、電撃文庫の伝説の作家、川上稔の大作です。初巻から最終巻まで並べると、本棚が半分埋まります。一冊がメチャクチャ分厚いんですね。そんな『終わりのクロニクル』のテーマは「戦後処理」です。
戦争がありました。幾つもの世界があり、それぞれ独自の文化と物理法則を持っていました。文字が現実になる世界や名前と能力が一致する世界です。それらの世界はたった一つしか残ることができないため、互いに殺し合いを繰り返していました。それも全て過去の話。
『終わりのクロニクル』は、戦争が全て終わったところから始まります。戦後五十年が経ち、直接に戦争を知る世代も少なくなった時代です。戦争を知らない勝利者が戦争を知らない敗北者に対して、戦後処理を行っていく。
ようするに、『終わりのクロニクル』は日本の戦後の意識したライトノベルなのです。もちろん、これはあくまでも作り話で、フィクションです。でも、『終わりのクロニクル』を読むことで、戦時調停の難しさや戦後処理の困難さが多少なりと勉強できます。
■『封仙娘娘追宝録』で忍耐を学ぼう

最後は『封仙娘娘追宝録』です。おっちょこちょいな仙人がいました。つい最近に見習いが取れたばかりの、なりたてほやほやの仙人です。彼女がうっかりミスをしたせいで、問題のある欠陥宝貝が仙人界から人間界に落ちていってしまったのです。
宝貝とは仙人の道具で、魔法のようなことができてしまいます。しかも、それの欠陥品ばかりが108も逃げ出したのです。うっかり仙人・和穂は優しすぎるという欠陥のある刀の宝貝・殷雷と人間界へ旅立つのでした。
『封仙娘娘追宝録』は、『フルメタ』や『召喚教師』、『オーフェン』に引けを取らないくらいの、傑作シリーズなんですよ。ところが、作者の急病と諸事情あって、初巻から二十年近く経った今でも最終巻が出ていません。あと一冊で大団円というところまで来て、ストップ中。
ライトノベルの恐ろしいところは、ココなんですよ。基本的に、ほとんどのライトノベルは書き下ろしです。雑誌に連載されている作品なんて数えるほど。マンガだったら雑誌がありますから、最悪は打ち切りという形でも完結してくれます。ところが、ライトノベルは書き下ろしですから、打ち切りという形すら取らず、事実上の未完作品が数多い。終わったのかどうかすら、分からない。
『封仙娘娘追宝録』は傑作です。でも、いつになったら終わるのやら、検討もつきません。さあ、あなたも読んでみましょう。きっと楽しくて楽しくてしょうがないはず。そして、シリーズ未完であることが悔しくてたまらなくなるはず。じっとこらえて、最新刊が出る忍耐を身に付けましょう。
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