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同性愛は卒業の対象となりえるのか このエントリーを含むはてなブックマーク

志村貴子『どうにかなる日々』における、無駄を廃した自然な二人の世界 - 空気を読まない中杜カズサ
カトゆー家断絶から。

どうにかなる日々 (1)         どうにかなる日々 (2) (F×COMICS)

どうにかなる日々 1巻 : 志村貴子  どうにかなる日々 2巻 : 志村貴子



 中杜さんの書いた、『どうにかなる日々』のレビューです。現在エロティクスFで『青い花』を、コミックビームで『放浪息子』を連載中の志村貴子さんの短編集です。全2巻で、刺身のツマ程度のセックス描写もあります。「エロい」というより「淫靡」な作品集といった感じです。

 個人的には、2巻に収録されているscene9が好きです。『どうにかなる日々』では女性の同性愛、いわゆるレズビアンをテーマにした作品が2つありまして、そのうちの一つです。主人公はベタの長い黒髪を持つOLです。昔付き合っていた女性が雑誌に登場し、「憧れの先輩と付き合っていた」、「そんな気持ちは卒業してしまった」と言われてしまいます。

 この「卒業」という言葉に深く傷つく主人公。今でも男性より女性を愛する自分は、いかにも子供らしい。社会に適応できていないだけの、不完全な人間であると言われたような気になります。そして、言った本人はおそらく、本当にそう思って生きているのです。それだけでなく、社会一般の人間の多くは、同性愛をモラトリアムに棲む特殊な人間であると認識しているのです。

 例えば、川原泉さんの『レナード現象には理由がある』には、ホモのカップルが登場します。ある会社の秘書とその会社の顧問弁護士のカップルです。彼らは深く愛し合っており、一般的な男女のカップルよりも思慮深く付き合いを続けています。二人は養子縁組という形による婚姻をするのですが、これは死に別れた時の遺産を考えるからこその措置です。男女のカップルより自覚的に二人の将来を考えているということなわけです。

 さて、このことを突然にカミングアウトされた両親は、凍りつきます。マンガの中では「石化」と表現されています。とにかく、何も考えられなくなって、止まってしまうわけです。ところが、彼の妹だけは動揺するものの、兄の決断を応援します。その理由が「紅茶が好きか、コーヒーが好きかみたいな違い」であり、「どっちが好きでも兄ちゃんは兄ちゃんだ」というものなのです。

 実際的にいえば、好きな相手が男だろうと女だろうと、同性であろうと異性であろうと、同じです。「紅茶が好きか、コーヒーが好きか」みたいなものなのです。ところが、社会的には、同性愛に特殊性を見出したり、「青春の迷い」で「卒業すべきもの」とされてしまったりするわけです。

 『どうにかなる日々』のscene9は、この微妙な感覚を上手い具合に描き出しているな、と感じるのです。単純な好みの問題を、あたかも年齢や精神の未発達に結び付けられて考えられてしまう。その齟齬・ズレをストレートに表現していると思うんです。

2008年05月26日 | トラックバック(0) | コメント(0) | マンガ | Page Top


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