週刊現代デビュー

2007年12月13日 23:53

 僕、書店でバイトしてるんですよ。駅前にある大きめの本屋。そこで、レジ打ちしたり、品出ししたり、返品したりしてるんですね。で、うちの本屋はよそとは品揃えが違っていて、『もやしもん』を一年以上に渡って平積みしてたり、高野文子が全巻揃ってたりするんですよ。そういう店なもんですから、よその書店では売れないものが、なぜかうちではバカ売れだったりするんです。

 まあまあ、そういうこともありまして、うちのコミック担当は一部で有名なようでして。このたび週刊現代でマンガの特集が組まれることになったそうなんですけど、うちのボスにもお声がかかったんですよ。「三十代から五十代くらいの男性が喜びそうなマンガ、ベスト5を送ってくれ」と。で、まあ、その下っ端である僕も巻き込まれたわけです。

少女ファイト 1 (1) (イブニングKCDX)


 まず、上司陣が外せない一冊として選んだのが『少女ファイト』。バレーボールの技術的な才能はあるんだけど、勝負事の才能はない女の子が主人公のスポ根ものですね。作者である日本橋ヨヲコさんの作品は、どれも台詞が熱いんですよね。気力に満ち溢れたみつを、珍しくギャグじゃないマンガを描いてみた島本和彦って感じなんです。

大東京トイボックス 1 (1) (バーズコミックス)


 『少女ファイト』と作風が被ってるので選べなかった作品として、『大東京トイボックス』があります。実を言えば、僕は『少女ファイト』より『大東京トイボックス』の方が好きです。ゲーム一筋で生きてきた職人気質のプログラマと四角四面なエリート女子社員が、対立し合いながらもじょじょに仲を深めていく。これが前作『東京トイボックス』のストーリーです。今作『大東京トイボックス』はゲーム大好きでゲーム業界に飛び込んできた新人が、その熱意で会社を振り回す展開になっています。未熟な新人が情熱でもって暴れまわるのがいいんですよね。

竹光侍 1 (1) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)


 で、上司陣が選んだもう一冊が『竹光侍』です。今回ベスト5の作品名とコメントを送れと言われてたんですけど、『竹光侍』はありがたいことにうちのコメントが採用されておりました。僕は読んでいないのですけど、上司に言わせると「筆で描かれた世界がとにかく綺麗」なんだそうです。また、「長屋の子供が健気でかわい」くて、「不細工な猫まで愛らしく見える」とも。
ヴィンランド・サガ 1 (1) (アフタヌーンKC)


 他に上司陣がオススメした作品が『ヴィンランドサガ』です。『プラネテス』の作者が描く、北欧の争いを描いたマンガです。これまた僕は読んでいないのですが、そろそろ赤いチャンチャンコを着るくらいの上司に言わせると「主人公の少年が成長していくのが良い」とのこと。「ああいうのは将来良い男になる」んだそうです。
イムリ 1巻 (BEAM COMIX)


 上司及び僕の統一見解では、今年一番の傑作は『イムリ』です。三宅乱丈の作品は外れなしです。貧乏寺の坊主が仏教専門学校を開く『ぶっせん』は素晴らしい出来のコメディですし、新撰組の組員が突如として女性化する『秘密の新選組』も何故か笑えます。他人の心に侵入して、意のままに操る術を持つ青年たちがヤクザ的組織の中で必死に生きる『ペット 1』のように、シリアスなマンガも絶品なんですよね。

 『イムリ』は上下関係の厳しい階層社会が舞台になっています。この世界ではエリートだけが魔法を使うことができて、呪文を唱えることで他人を奴隷にしてしまえるんですね。貴族たちは悠々自適に暮らす一方で、平民は貧しい生活を強いられているのです。主人公は貴族のボンボンなんですが、なぜか運命によって革命軍のリーダーと思われてしまっています。一見ファンタジーなんですけど、星間航行などSFの要素もあるので、そういう点でもオタクにはたまらない設定です。

やっぱり心の旅だよ


 で、最後に「三十代から五十代の男性」を意識して選んだのが、『やっぱり心の旅だよ』。これは人によって好みがはっきり分かれる作品ですね。短編集なんですけど、前半に収録されているのは狙いすぎて痛々しいシュールギャグです。はっきりいってマンガとしての面白みはないに等しいんですけど、その痛々しさがすごいんですよ。ヘタクソな絵で、普通に考えたらやめておくだろうネタを描いてしまう。その痛々しさといったらないですよ。

 エロマンガ雑誌を買うと、出会い系のマンガが必ず載ってるじゃないですか。「登録したら、こんなに簡単に淫乱人妻・えっち大好き女子高生と出会えちゃいました、セックスしちゃいました」ってヤツ。後半部分は作者が以来されて描いた出会い系マンガが収録されてるんです。これが、また、中学生が授業中に考えていたことをそのままマンガにしたような、分かりやすいエロマンガなんですよね。出会って三秒で股開きます、みたいな。これが、また、童貞マインドをくすぐるような感じで、いいんですよ。

 まとめると、『やっぱり心の旅だよ』はすごいダメなマンガなんです。けど、そのダメさが素晴らしいんです。


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