藤田和日郎は本当に、強い、作家さんですよね。それは腕力があるとか、脚力とかではなくて。頭が良いとか、ケンカに勝てるとか、そういったものではなく。マンガが面白いとか、絵柄がはっきりしているとか、それともちょっと違って。
マンガというのは色んなものが束ねられて作られています。まず、絵です。マンガ家の個性が一番に表れるのが絵柄です。それも上手いだけじゃなくて、インパクトのある絵柄が必要とされます。風景画よりもピカソの方が心に残るのと一緒で、とにかく個性的で分かりやすい絵柄が大切です。
それに、やっぱり、お話を書く能力もいります。どんなにインパクトのある絵が描けても、話が書けないとマンガにはなりません。イラストとして優れているからといって、必ずしも良いマンガにはならないのです。起承転結でも序破急でもいいです。とにかく、面白い話がいります。
そして、最後に、一番重要なのは、勢いですかね。熱といってもいいんですけど、面白いマンガには圧力みたいなものがありますよね。1ページ読んだだけで、「ああ、これは面白い」と思わせる何か。絵柄も話も大切ですけど、面白さに必要なエネルギーってのがあるんですよね。
で、当然ながら、藤田先生は、この三つを持ってます。持ってるだけじゃなくて、それらを上手くコントロールして、まとめあげる才能があるんですよ。だから、どこかのバランスが崩れたとしても、それを調和させちゃうんですね。
 月光条例:藤田和日郎
例えば、これ。三つの絵柄が入り混じってます。一番左は間違いなく藤田先生の画風です。真ん中の女の子二人は明らかに藤田先生ではなくて、萌えを意識した画風の人です。右端に並ぶ男子たちは画風といった画風ないですが、これも藤田先生とはちょっと違う。
全然別の絵柄が三つも入ってるんです。でも、破綻しない。そういうマンガなんだと思わせてしまう何かが、藤田先生のマンガにはあるんです。絵柄がちょっと乱れたくらいで、マンガがおかしくなるわけがない。そんなパワフルさがあるんですよ。
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