『こち亀』というのは、ご存知、国内単行本巻数ナンバーワンで、ギネスにも載った長寿作品です。週刊少年ジャンプに連載していて、乱暴で金にうるさい。これと決めたことに対する集中力が凄まじくて、意外に良い人でもある。下町人情に溢れる警察官、両津勘吉を主人公にしたドタバタコメディです。
これが長続きしているのには理由がありまして、作品が複数のテンプレを使い分けることによって、ネタ切れの枯渇を防いでいるんです。そのテンプレの一つに、新しい情報を分かりやすく伝える、というのがあります。
例えば、格闘マンガでは、誰がどれだけ強いのか分からなくなります。殴ったり蹴ったりビーム出したりするわけですが、その威力がどんくらいなのか分かりづらいのです。どれだけ絵が上手くても、分かりづらいです。ところが、「○○ビームは××の何十倍の威力だ」なんて驚く人がいるだけで、一瞬に分かるのです。
これと同じことが『こち亀』にも言えます。仮にイメージイラストが何を示しているのかよく分からんとしても、両津を始めとするキャラクターたちが立ち位置を決めて喋っているだけで、分かりやすいのです。お金持ちの中川が喋ることは小難しいことで、部長の喋ってることは説教。ポジションがはっきりしているので、仮に台詞が全てパピプペポでも通じちゃうわけです。
 こちら葛飾区亀有公園前派出所:秋本治
今週号のネタは、「地下空間を利用した現代建築」というヤツです。こうして字面だけ眺めると、いかにも難しそうです。でも、上のイラストを見ると、一目瞭然。土の中にビルを埋めるのではなく、大きな空間の中にビルを建てる方式なのです。
このページだけ見ると、ギャグマンガの一部とは思えません。細かな設定までちゃんと考えられています。当然ですが、最新の知識を説明するためには作者がしっかり理解していなきゃいけません。イラストやキャラクターもすごいんですが、秋本先生のアンテナも相当です。
 とある魔術の禁書目録:鎌池和馬
ところで、『とある魔術の禁書目録』という作品を知ってるでしょうか? これは電撃文庫から出ているライトノベルで、アニメ化も決定した、超人気作品です。少年マンガのような熱い主人公が、この世の理不尽を叩き潰す、爽快アクションです。
この主人公・上条当麻は学園都市というところに住んでいます。科学の発達を促進するための都市で、学者と学生しかいません。最先端の技術が集められ、新しい技術の実験場でもある、科学の科学による科学のための都市なのです。
その設定をアピールするためか、『禁書目録』では、しばしば最新の科学技術についての記述があります。電磁波を受けて回転し、電力を生み出すプロペラ。電波の送受信機能を互いに利用することで、携帯電話そのものを基地局にする技術などです。
で、最新刊である16巻の舞台は、地下に建設された超高層ビルなのです。散りばめられた記述を拾っていく限り、『こち亀』に描かれている技術と全く同じものです。おそらく、元ネタの出典が同じところなのでしょう。
『こち亀』の秋本治先生と『とある魔術の禁書目録』の鎌池和馬先生には共通点があります。それは作品の中に新しい技術の話を含ませていること。そこのアンテナを常に張っていて、作中で分かりやすく解説していることです。
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