 観用少女【完全版】:川原由美子
『観用少女』はプランツ・ドールという人形をテーマにした連作短編集である。プランツ・ドールとは愛らしい少女の姿をした人形の名前だ。次々に登場する主人公たちは、恋人の代わりに、子供の友達に、一種のペットとして、様々な理由によってプランツ・ドールを手に入れる。そして、その愛らしさにある人は幸福になり、ある人は不幸になる。
少し話は逸れるが、漫画における時間の描写は大きく二つに分けられる。それは時間が進むものと進まないものである。そして、この時間が進むか進まないかということは、その作品が何を表現したいのかということに、密接に結びつくものである。

まず、時間の進む例を挙げると、『絶対可憐チルドレン』がある。『観用少女』と同じく、この作品にも愛らしい三人の少女が登場する。彼女たちは強力な超能力を持っており、未来において世界を救う天使か、世界を滅ぼす悪魔のどちらかになることが分かっている。主人公である青年は、彼女たちを天使にするべく奮闘するのだ。
この作品には明確な未来が設定されており、それは時間が進むことを前提に物語が作られていることを意味している。主人公の青年は少女たちの愛らしさの背後に、少女たちが未来に備える美しさを見る。つまり、ここでの少女の愛らしさは少女が未来に持つ愛らしさの延長線上に位置付けられるものであり、それは年齢に関わらない女性そのものの愛らしさに還元できるものである。

次に、時間の進まない例では、『苺ましまろ』がある。この漫画は四人の少女と彼女たちより少しだけ大きな一人の少女を主役にしたコメディである。そこでは「お祭りに行く」「外に遊びに行く」といったストーリー性が多少でもあるものから、ただひたすらに小ネタを続けるストーリー性が皆無のものまであるが、そのどちらも主眼は少女たちの愛らしさを表現することにのみ向けられている。
この作品では春や夏、クリスマスや節分といった季節を描写することはあっても、少女たちが歳を取るということは決してない。ここでは、時間とは瞬間的なものであり、一つの話が終わる毎にリセットされるのである。作者が時間を進ませないのは少女たちを成長させないためである。成長しない、永遠の少女がこの作品における愛らしさであり、それは女性そのものには還元されない類のものなのである。
さて、『観用少女』で描かれる時間とは進むものだろうか、それとも進まないものだろうか。時間が進まない例で書いたように、時間が進まない作品とは正確には時間が戻る作品のことを指す。連作短編である『観用少女』では同一のキャラクターが登場することはない。であるから、この作品は時間の進むものであると言える。
では、そこで描かれる少女の愛らしさとは女性そのものに還元できるものだろうか。『観用少女』では、誤った育て方をしたプランツ・ドールが大人になってしまう、という設定がある。これは少女の成長に対する明確な否定である。この作品における少女の愛らしさとは、永遠の少女のことなのである。
それは時間の進む世界における未発達の女性でもなく、時間の進まない世界の変化しない少女でもない。時間が進む世界でありながら、決して成長しない。周囲の時間が幾ら進んでも、決して自分自身は成長しない。それが『観用少女』であり、プランツ・ドールである。
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