 アンダーザローズ:船戸明里
『アンダーザローズ』が文庫化したんです。もう、驚きですよ。つい先日に原本の5巻が発売されたばかりなのに、もう文庫化ですか、っていう。『アンダーザローズ』は全四部構成の物語になってまして、それぞれ季節になぞらえてあります。
今回文庫化したのは第一部である「冬の物語」です。落ちぶれ貴族の子供であるライナス。不義密通、許されぬ環境で産み落とされたライナスは父親の顔も知りません。年に数度しか会うことのなかった母を亡くしたライナスは、未だ見ぬ父の元へ引き取られることになります。
貴族としての格は下でありながら、広大な領地で民に慕われ、裕福に暮らす父。父は家族を愛し、あるいは天上の世界にも見える場所に放り込まれたライナス。父も知らず、母に会うこともなく、元貴族の栄華を忘れられぬ祖父とろくに食べるものもなかったライナスの復讐が始まります。
いやー、みんな、買えばいいと思いますよ。原本だと2巻の途中までが「冬の物語」です。ということは、原本で読もうと思うと、900円近い本を2冊買わなきゃいけない寸法です。ところが、文庫版だと700円の本が1冊ですから、明らかにお得です。
 ワンダービット:島本和彦
文庫化して嬉しかった作品というと、『ワンダービット』なんかもそうですね。あの島本和彦が描くSF短編集って書くだけで、もう、面白そうでしょ。あの「ヒーローもの書いて下さい」と言われて、宇宙人や総理大臣と闘うマンガ家を書いた島本和彦です。面白くない、わけがない。
例えば、カッコイイけど、モテないという男。自分はメチャクチャにかっこよくて、世の中にはブサイクな男が溢れている。そして、可愛い娘ほどブサイクな男と歩いている。「そんな世界は間違ってる!」と叫びだし、あまつさえ、革命さえ起こそうとします。
島本和彦の発想力は無限大ですね。しかも、SFという、事実上の無制限ジャンルです。島本和彦の想像力を妨げるものが何もありません。なんでこういうことを思いつくんだ、そんなことはありえないだろ、というネタがわんさか出てきます。
百鬼夜行抄:今市子
シリアスな作品だと、『百鬼夜行抄』も文庫化がありがたい作品ですね。『ネムキ』という雑誌がありまして、旧誌名は『眠れぬ夜の奇妙な話』。誌名通り、単純に怖い話ではなくて、ちょっと奇妙な話が多いです。コメディもありますけどね。
『百鬼夜行抄』は妖怪マンガです。お祖父ちゃんから妖怪を見る力を受け継いだ、主人公の青年を律といいます。彼は妖怪が見えるばかりに、ある時は妖怪に慕われ、恨まれ、人間からは霊媒師のようにされることもあります。
人間をとり殺す鳥の妖怪と対決することもありますし、亡くなった少女を鎮めることもあります。いつでも怖いお話というだけではなくて、ちょっと笑えてしまうエピソードなんかもあります。一個のお話だけでなくて、作品全体のバランスがとてもいいのです。
幻冬社にはぜひぜひ『DARK EDGE』の版権引き上げと文庫化をして欲しいなぁ。
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