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■2007/12/25(火) マンガにおける大声の表現(『ワンピース』) このエントリーを含むはてなブックマーク

ONE PIECE (巻48) (ジャンプコミックス)
ONE PIECE:尾田栄一郎


 上の画像を見て欲しい。これはジャンプ今週号(04・05合併号)の『ワンピース』の一コマである。左が死体を縫い合わせてゾンビの体を作ってしまうホグバック、右がゾンビのアブサロムである。彼らのボスであるゲッコー・モリアがルフィに倒されたために、ショックを受けている、というコマである。

 このコマを見て、何を思うだろうか? まず、アブサロムの台詞に「!!?」とついていることから、彼の驚きを見て取ることができる。これはマンガ表現というよりも国語表現の問題だ。いわゆる、ビックリマークというのは、その使用者の語気を強める働きを持っている。!が多いほどに、口調は激しい。

 しかし、このコマから読み取れるものは、それだけではない。アブサロムよりも注目すべき点は、左側に描かれているホグバックである。ホグバックがアブサロムよりも動揺していることを理解するには、彼の台詞に使われている!を見れば一目瞭然である。

 また、ホグバックの台詞の数はアブサロムの台詞よりも明らかに多い。これは現実世界にも言えることだが、怖がりな人間ほどお化け屋敷やホラー映画などで饒舌になる。思ったことを口に出すことで、不安を押さえようというわけだ。ホグバックにも同じことが起きているのだ、ということがすぐに読み取れる。

 さらに、ホグバックの頭の横には「ギャアアアア」という書き文字までついている。これは間違いなくホグバックの悲鳴である。アブサロムの声で悲鳴をあげてしまうほどに、ホグバックは動揺してしまっている。スリラーバーク編はナミやウソップの悲鳴で始まっているので、ホグバックの悲鳴は敵味方の逆転をも意味している。

 だが、しかし、このコマから読み取れるものはそれだけではない。このコマが伝えているものは、アブサロムの驚きでもなく、ホグバックの動揺でもない。このコマが真に伝えたいことは、ホグバックが動揺したことによって道化を演じている。そのおかしみなのである。

 そのおかしみとは何か? それはホグバックがアブサロムに倍する大声で「静かにしろォ!!!」と叫んでいることである。全く矛盾した言葉を堂々と叫ぶ。その姿がなんとも滑稽で、笑いを誘うのだ。このコマは、そのおかしさを表現するためだけのものである。

 では、なぜホグバックが大声で叫んでいると分かるのだろうか。俺にはそうと分かるし、これを読んだ全ての人は俺と同じおかしさを感じただろう。そして、作者である尾田栄一郎の頭の中でも、ホグバックは叫んでいるはずだ。だが、この大声という根拠は一体どこにあるのだろう?

 !が多いからだろうか。!は強い口調であると上に書いたし、一般的に口調は強くなればなるほど声量も大きくなる。だから、ホグバックは叫んでいる。そう断言していいのだろうか。確かに、!は強い口調を表すが、必ずしも大声であることを意味しない。声にならない声を表現する時に台詞抜きで!だけを用いることがあるように、!とは強い衝撃を意味するに過ぎない。大声であると言い切るほど確定した材料にはならない。

 ホグバックが叫んでいる、と我々が認識するのは、彼のフキダシが大きいからである。ホグバックのフキダシがアブサロムのフキダシよりも大きいからこそ、我々は「ホグバックが大声で叫んでいる」と認識するわけである。

 フキダシというものは、マンガにしかない。アニメにもなければ、小説にもない。マンガにのみ用いられる、独特の手法である。フキダシに対する我々の半ば反射的な理解は、おそらく幼い頃からマンガに慣れ親しんだ末のものだ。そういった経験があった結果として、我々は無意識のうちに、フキダシの大きさが声量を表すことを当然のものと認識しているのである。
23:40 | トラックバック(0) | コメント(8) | マンガ | Page Top


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【2007/12/27 09:08】 | # [ 編集]

フォントの違いもあるのでは?
【2007/12/27 12:07】 URL | とおりすがり #mQop/nM. [ 編集]

自分もこのコマの場合はフォントの表現の影響の方が大きい気がします。
あとホグバックの台詞の数が多いのは「焦り」を表現していると感じました。
一コマで人それぞれの感じ取り方があるのも漫画の醍醐味ですね。
【2007/12/27 13:34】 URL | TS #k8Q20NhE [ 編集]

吹き出しが上にかぶさっている事により、
相手の声を掻き消すほど大きな声で叫んでいる、
相手の話を遮っている、
ということも表現のポイントだと思います
【2007/12/27 13:40】 URL | マンガの名無しさん #- [ 編集]

初めまして。
前の方が言っている通り、フォントとその大きさも一因であると思います。
【2007/12/27 14:00】 URL | AW #UwJ9cKX2 [ 編集]

割とどうでもいい部分のツッコミですが、アブサロムは改造手術を受けているだけでゾンビではありません。
【2007/12/27 22:13】 URL | マンガの名無しさん #/Sod2JZU [ 編集]

上のコメントに追加して、吹き出しの形も印象を左右していると思います。
声は大きいほど割れたように響くので、吹き出しの刺も鋭角的になる。
【2007/12/27 23:03】 URL | マンガの名無しさん #GhMHlou2 [ 編集]

>アブサロムの件
アブサロムはゾンビではなかったんですね。
雑誌の記憶のみなので、間違えました。
尾田先生にしては後味悪いなぁ、と勝手に思ってました。

>フォント
フォントの説明はスキャンした画像では分かりにくいかな、と思ったのでやめました。
フキダシが重なっていることや形が鋭角的であるなどは見落としました。

自分が考えた以上に、色々な見方があってありがたいです。
【2007/12/28 23:09】 URL | 犬 #- [ 編集]
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