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マンガ終了の構造的問題 このエントリーを含むはてなブックマーク

 短編マンガと長編マンガでは、短編の方が評判が良い、ということがしばしばある。例えば、冨樫義博の作品では『幽遊白書』が有名ではあるが、マニアの間では『レベルE』の方が評判が良い。藤田和日郎は『うしおととら』や『からくりサーカス』といった長編の作品を描いていたが、作品全体を比べると『夜の歌』や『暁の歌』の方が面白い、という声もある。

 これは単純に短編の方が手に取りやすい、読みやすいということも理由にあると思われる。しかし、個人的感覚でいえば、実際に短編の方が完成度が高い場合も多い。では、なぜそうなるのか。グラフを使って考えてみよう。



 まず、読者の理想を考えてみよう。読者は一定量の情報によって一定量の楽しさが得られることを理想としている。具体的には、週刊マンガ雑誌であれば、一作品のページ数は最低18Pくらいである。一話目も二話目も、十話目も同じ18Pだったとしたら、読者としては全て同じくらいに楽しく感じられることを期待しているだろう。

 つまり、読者の理想は一定の係数を持った直線として描き出すことができる。



 ところが、現実はそうならない。例えば、同じページ数であり、背景やキャラが同じだけ描き込まれていたとしても、読者が受け取る情報は変わってくる。一話目では目にする何もかもが新しいものであり、情報の価値が高い。だが、二話目、十話目となってくると、同じ背景や同じキャラだったとしても慣れてしまっている分だけ相対的に価値が低い。

 具体的に言えば、初期の『ドラゴンボール』では悟空が痛めつけられるたびに、ハラハラした。負けてしまうのではないか、今度こそ死んでしまうのではないか。そういう思いをさせられる。しかし、単行本が十冊も越えると、何があったとしても悟空が負けることはない、と思えてしまう。例え、死んでも生き返れるし、と。

 情報による楽しさの増加率が逓減していくのだ。つまり、現実のマンガは右上がりの曲線として描ける。



 これらを一つのグラフの上に乗せてみる。

 Aの位置では、マンガ現実曲線が読者理想直線を上回っている。マンガ現実曲線から読者理想直線を引いた分が、読者の余剰利益となる。単純にいえば、Aの段階では読者の期待を上回る楽しさがある。

 Bの位置では、マンガ現実曲線と読者理想直線が等しくなっている。マンガ現実曲線に読者理想直線が追いついた形だ。読者の期待を上回るほどの面白さは既になくなっているが、ちょうど期待通りの面白さがある。

 Cの位置では、マンガ現実曲線を読者理想直線が上回ってしまっている。読者理想直線からマンガ現実曲線を引いた分だけ、読者は損害を受けている。ようするに、理想を下回っている分だけつまらなく感じてしまう。



 初期の段階で読者が得られる余剰利益の部分がXである。これは読者が期待していた以上に感じられた面白さのトータルである。逆に、Yの部分は、読者の期待を下回った、期待外れのトータルである。

 おそらく、読者がマンガを読むのをやめるのは、XとYが等しくなったポイントであろう。何故なら、予想外の楽しさと期待外れのつまらなさが等しくなった。読者が無意識のうちにそう判断した瞬間に、読者は読むのをやめる。

 短編マンガの場合、物語は一話、多くても二桁まで届かない話数で完結する。すると、三番目のグラフでいう、AやBの位置で物語を終えることができる。つまらなく感じてしまうCのポイントまでは行かないのだ。すると、読者は予想外の楽しさだけを感じて読み終えることができる。

 長編マンガの場合、物語が何話で終わるかというのは明確に定まっていない。この場合、多くのマンガ家と編集者が連載を終了させようと考えるのは、XとYが等しくなったポイントである。このポイントまでは読者が読みのをやめず、金を払ってくれると考えられるからだ。

 つまり、多くのマンガ家の場合、読者が満足するポイントで物語を止めるということは、構造的にありえないのだ。例外があるとすれば、マンガ家が生活に困らない場合。次回作でも同じだけ稼げる自信がある場合。極端なまでに芸術家肌である場合。この三つだけである。

2007年12月31日 | トラックバック(0) | コメント(5) | グラフで語ってみる | Page Top


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■コメント


うんこー

【2008/01/10 23:17】 URL | kskする名無し! #- [ 編集]

この考察はなかなか面白かった、経済学的な
アプローチだね
【2008/01/11 00:06】 URL | マンガの名無しさん #- [ 編集]

ありがとうございます。
シリーズものの評価が高い理由もこの論理で出せます。
需要なさそうなので、書きませんけど。
【2008/01/11 01:58】 URL | 犬@管理人 #- [ 編集]

>>二話目、十話目となってくると、同じ背景や同じキャラだったとしても慣れてしまっている分だけ相対的に価値が低い

あのさ、これだと情報量が増えて無いじゃん。グラフと関係ないじゃん。
やりなおし
【2008/01/11 14:58】 URL | マンガの名無しさん #- [ 編集]
■それより
長編マンガの無理やりな引き伸ばしが目立ちはじめたからじゃないか?
北斗の拳もキン肉マンもドラゴンボールフリーザ編までも意外と巻数が少ない割りに話は結構進んでいる。最近のマンガの引き伸ばしっぷりは醜い。そのため、週刊誌にはドライブ感がなく面白みに欠け、話の密度が濃い短編に人気がでているのでは?
【2008/01/11 15:11】 URL | マンガの名無しさん #- [ 編集]
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