『脳噛ネウロ』シックス編には構造的欠陥がある。
まず、『ネウロ』は推理マンガの形式を取っている。読者に推理させるだけの情報や時間を与えていないので、読者が推理することは不可能ではある。ただ、冒頭で謎を提示し、それによって物語を進めていく形式を取っている。
例えば、ネウロが登場する初回のエピソードは、ファミレスの殺人事件だった。この殺人事件では、犯人も知らなければ被害者も全く見ず知らずの人物である。それどころか、狂気やアリバイに関する情報も一切読者には開示されていない。
ところが、ここには謎というものがあった。それは殺人事件のトリックではない。ネウロという怪人に対して、読者が持つ不思議。それが謎である。この男は何なのだろう。一体どういうことをするのか。さらにいえば、このマンガは今後どういった展開をするのだろうか。そういった謎が読者を牽引していた。
『ネウロ』は殺人事件など推理マンガ的なネタを扱いながらも、それを謎の核にはしない。犯人がしばしば醜悪な魚や動物に化けることから、その姿が謎になったり。犯人の目的や犯行動機が謎になったり。と一般的な推理マンガでは問題にされない部分を謎とし、それによって物語を進めるマンガなのである。
ところで、現在『ネウロ』はシックス編に突入している。シックスとは人間の悪意が定向進化した存在であり、その悪意のために人類よりも発達した頭脳を持っている。人間ではない人間である。彼らは人間の存在を認めておらず、地球人類の滅亡を目的として行動している。
人類の生み出す謎を食料として生きるネウロと人類の根絶やしを目指すシックスは、当然対立する。それも好みや主義主張ではなく、生存するための目的が対立しているのだから、妥協や協力は考えられない。徹底的な殺し合いになっている。
このシックスの存在が厄介なのである。ネウロにとって厄介なのはもちろんだが、物語構造的にも非常に厄介なのである。まず、ネウロは謎を食う生物であり、謎が食える限りは死ぬこともない。一方で、シックスはネウロを殺すために、謎を作ってはいけない。純粋なら悪意による攻撃のみで、ネウロを仕留めなければならない。つまり、ネウロとシックスの戦いに、謎が存在してはならない。
 魔人探偵脳噛ネウロ:松井優征
ところが、冒頭でも触れたように、『ネウロ』というマンガは謎によって物語を進めている作品である。謎がなければ話が進まないのである。だからこそ、謎は描かれなければならない。例えば、今週号では五本指と呼ばれるシックスの一人の顔が隠されている。また、本城刹那の死因に触れ、謎を演出してもいる。
詳細に読むと、ネウロとシックスの戦いに謎を介入させず、それ以外の部分に謎を作り出すことで物語を進めていることは分かる。逆にいえば、詳細に読まない限り、こういった構造は非常に分かり辛い。少なくとも、パラパラめくって、それが分かることはないだろう。
キーワードは謎である。謎をめぐって、物語は展開している。しかし、どれが謎で、どれが謎ではないのか。そして、どの謎ならば存在が許され、どの謎なら物語上おかしいのか。これがシックス編になって、複雑になりすぎている。構造的欠陥は言い過ぎかもしれないが、非常に難しい状況である。
|