石田敦子のマンガは萌えと鬱のダブルパンチだね。
■少年の魔女っ娘もの『魔法少年マジョーリアン』
有名どころだと、『魔法少年マジョーリアン』という作品がある。奇妙なウサギ型のマスコットにアイテムを渡されて、うっかりと魔法少女になってしまった二人の少年。彼らは男の子だけど、大人の女の人に変身して、大きな敵をやっつけなければならなくなったわけ。
見たところ小学校高学年の二人。特に、クラスでもガキ大将を気取るマサルは女に変身することを嫌がるわけですよ。マサルは姉が三人もいて、どいつこいつもワガママで横柄。大嫌いな姉がいるせいで、女性自体に嫌悪感がある。だから、極端な話、女になるくらいなら地球が滅んでもいいとまで言い出す。
一方で、イオリはとても健気な少年。いじめられても黙って耐え、母親のために家事の手伝いもする。気弱で大人しくて、優しい。そんなイオリだから人々の暮らしを守るためなら、ためらわずに変身して、敵と戦う。でも、イオリが頑張るのは、頑張るイオリを必要としてくれる誰かがいるからでもある。イオリを必要としてくれる人がいなくなったら、あらゆるものを見捨ててしまえるだけの残酷さもある。
マサルもイオリも、その周囲の人々もみんな可愛い。石田敦子の絵柄は可愛いのだ。萌えという言葉だけでは表現できない可愛らしさが、彼女の絵にはある。お話も一見すると日曜朝にやっている子供向け番組みたいな感じなのだが、その内実はものすごい鬱展開。このギャップがたまらない。
■美少女戦隊もの『わがまま戦隊 ブルームハート!』
『ブルームハート』はご町内の平和を守るだけの、少女五人組。謎の博士の作った装置を使うと、一瞬にしてコスチュームが変化して、大の男でも投げ飛ばせるだけのパワーや魔法のような必殺技を使えるようになる。彼女たちの守備範囲はご町内だけで、国や世界を守る気なんてさらさらない。「世界平和なんて馬鹿なこと、男にまかしとけばいい」と公言している。もしかしたら、これは少年二人が世界を守る『マジョーリアン』を意識した伏線だったのかも、なんて。
ご多分に漏れず、『ブルームハート』も鬱展開が満載。過保護な親の干渉で家を出ることもままならず、戦隊に参加しないことで仲間からは責められ、疲れきるゆり。何の見返りもなく献身する自分を、役立たずと罵り、良いように使うことに疑問を感じるのばら。学校と戦隊の仕事をこなしながら、何かが少しずつ壊れていく様子が鮮明に描き出されている。
この少女五人組がしっかりと描き分けられている上に、個性もあって、可愛いのである。左から順番に、清楚でおっとりとしたゆり。活発でボーイッシュなひまわり。明るくて元気なのばら。天然でぼんやりしたすみれ。真面目で気弱なさくら。個人的には、性格・ビジュアル両面でさくらが好き。しかも、上に書いたように、リアルな展開がしっかりと鬱を誘う。
■暗い世界に蝕まれる子供たち
石田敦子の描く子供たちはとても可愛い。その可愛い子供たちが暗い影に蝕まれていく姿は、まるで現実の世界にファンタジーが陵辱されているようですらある。その背徳的な感覚が石田敦子の魅力である。
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