人間でないものを使って人間を描き出す技法(『巨娘』)

2008年02月20日 20:23

 『神戸在住』に触発されて、もう何十週目だか分からないですが、『巨娘』読んでました。今日の記事はマンガの話ではなくて、マンガ技法の話です。

 マンガというのは、フィクションなんですね。どんなに精巧でリアルに描かれているように見えるキャラクターでも、それはマンガの約束に従って描かれているんです。例えば、『ジョジョ』は劇画調であり、リアルな描写と思われがちな反面、明らかに人体に無理のあるポーズを取ってたりします。フィクションとリアルが入り混じったもの、それがマンガです。

巨娘 1 (1) (アフタヌーンKC)
巨娘:木村紺


 上の女性は、サチさん。大学時代、少々ナルシストだった彼氏を大学教授(♂)に取られた苦い過去があります。さらに、就職した証券会社で上司のカンガルー(オーストラリア産)にストーキングされ、退職を余儀なくされています。居酒屋の社員になるものの、今度は客に一目ぼれされた挙句、暴行されかけています。サチという名前ながら、幸の薄い女性です。

 そのサチさんにも、とうとう春が訪れようとしています。お相手は居酒屋の副店長タケル。板前あがりで料理の腕に優れ、居酒屋チェーンは彼の力量にかかっている部分があります。顔もなかなか優れた顔面をしておりまして、性格も一本気で良いのです。非の打ち所がない、というヤツです。ただし、脇役。

 上のシーンは、サチさんがタケルに食事に誘われたところです。憧れの男性から夕食を誘われ、迷ったそぶりのサチさん。その目が泳いでいるのが、上の画像を見ると、よく分かります。そして、そこが今日のポイントであり、書きたいことです。

 人間は、実は目は動きません。もちろん、まぶたが開いたり閉じたりはしますし、目玉がぐりぐりと動くこともあります。しかし、目の位置は変わりません。生きていれば当然のことですが、人間は目を動かすことができないのです。

 だから、この絵はおかしいのです。黒目が横にそれることはあるとしても、目の位置が右に寄ったりすることはありません。人体の構造上、それは不可能なんです。ただし、これはマンガです。黒目を動かすよりも目を動かす方が、インパクトは強く、表現として分かりやすいです。

 つまり、ここはキャラの心情をより正確に分かりやすく表現するために、登場人物が人体ではなくキャラクターとして描かれた瞬間なのです。そして、これが人間でないものを使って人間を描く、マンガにしかできない表現の一つであると、俺は考えています。まあ、その話はいつか。


コメント

  1. マンガの名無しさん | URL | YpqZtgVo

    ippei

    こちらの紹介で興味を持ち、巨娘買ってみました。
    正直、こんなにも面白いとは思っていませんでした。マンガの技法はよくわかりませんが、何度でも読みたくなる、読ませる力のある作品ですね。
    いつも購入の参考にさせて頂いています。いい本を紹介してくれて、ありがとうございました。

  2. 犬@管理人 | URL | -

    ありがとうございます。

    『巨娘』は面白いマンガなんですけど、
    何がどう面白いのか説明しづらいマンガですよね。

    上は『巨娘』についての四件目の記事です。
    サイト内を『巨娘』で検索すると
    他の三件の記事も表示されると思います。

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