『チノミ』が面白すぎるのである。謎と伏線の多いストーリー、ド迫力の絵、一流のユーモアがある。並べてみると陳腐に思えるだろうけれど、実際にそうなのだ。ものすごく面白い。
チノミというのは、「血飲み」である。主人公の一家は、なぜか毎週日曜日に血の夕食を取る。血のハンバーグや血のチャーハン、血の味噌汁などである。主人公の物心ついた時には、それが当然だった。それは両親や祖父の代から続いているルールなのである。
主人公は高校卒業後、フリーターをしている。友達や仲間から夕飯を誘われても、日曜日だけは決して誘いを受けない。主人公自身、なぜそこまでしなければいいのか、全く分かっていない。分かっていないが、それを破らない。それくらいに徹底したルールなのである。
彼の家には、もう一つ、ルールがある。それは血の食事を取っていることは、決して誰にも喋ってはいけない、ということである。もし、誰かに喋ったら、その時は「クロセビロのおじさん」がやってくる。クロセビロが誰なのか、それすらも分からないが、ともかくも喋ってはいけない。
 チノミ:吉永龍太
『チノミ』の面白さの一つは、ド迫力の絵である。上は主人公の先輩が悪漢と戦っている場面なのだが、彼の感じる恐ろしさが細部までこだわって描かれているのが分かる。ベタといえばベタな絵柄なのだが、メチャクチャにインパクトがあり、マンガとしてこれ以上に迫力のあるものは描けないのではないか、とすら思う。
 チノミ:吉永龍太
『チノミ』のもう一つの面白さは、そのユーモアである。上は主人公の先輩が悪漢を殺してしまった後の場面である。高校を中退し、自分のことを頭が悪いと称する男である。その男が必死になって、死体の処置を考えている。
「通報する」、「バックれる」、「自首する」などの下に、「ブタに乗って逃げる」という選択肢がある。これに対する反論は「ブタがない」である。これは混乱した男がとっさに描いた空想であると冷静に判断することもできるが、同時に作者一流のユーモアでもある。
謎に満ち、迫力に溢れ、ユーモアの光る『チノミ』。特に『ジョジョ』の一部や二部、三部の中盤(オインゴボインゴくらい)までが好きな人は買いである。
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