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■2008/08/14(木) 『ワンピース』は、何故このタイミングで、黄猿を出さなきゃいけなかったのか このエントリーを含むはてなブックマーク

 昨日の続きです。内容は、タイトル通り。『ワンピース』に黄猿というキャラクターが登場した理由。というか、本当は黄猿じゃなくてもいいんです。ようは、今、光に変身できるキャラクターが圧倒的に強いところを見せ付けなきゃいけないっていうことなんです。

 結論からいえば、ティーチがいるからです。ティーチというのは、ヒゲがモッジャモジャに生えて、ビール太りしたおっさんです。ルフィの兄貴である火拳のエースをぶっ倒した、メチャ強い男で。例によって、悪魔の実を食ってます。

 ティーチの食った悪魔の実は、ヤミヤミの実といいます。これは煙に変身するとか、雷になるのと同じで、自然系の能力らしいです。自分の体に協力な引力を発生させて、周囲のものを引きずります。そんで、他の悪魔の実の能力は完全にないものになっちゃうってことなんだそうです。

 で、ここが問題なんですが。そのティーチが、そろそろ再登場しそうな雰囲気なのですよ。ティーチに捕まったエースが処刑されるそうなんですが、それを巡って七武海と白髭海賊団が戦争しかけてるって状況です。元白髭海賊団の船員で、現七武海のティーチが出ないわけがないです。

 このティーチのヤミヤミの能力を効果的に見せるには、光の能力が必要になるわけです。なんでかというと、強いとか弱いとかを見ると、読者は反対のものを思い浮かべます。そして、その反対のものが負けてこそ、すげえ強い。そういう感想を抱くからです。

 つまり、ヤミヤミの能力を持ったティーチを再登場させるに当たって、かませ犬として光の能力者が必要になった。それが黄猿なわけです。そして、実際、ティーチと黄猿が戦ったら、ティーチが勝つだろうと予想もできます。

 ティーチの能力は「敵を引き寄せて」「悪魔の能力を封じる」というものです。ようするに、どんな相手でも、殴り合いのケンカにしちゃうわけです。となると、問題はティーチの格闘能力なわけですが、実際、ティーチはエースに殴り勝ってます。

 そもそも、悪魔の実の能力者は、能力を使って戦ってるわけです。動物に変身するタイプ、ルフィみたいに結局は殴り合いやってるヤツらはともかく。火を放つとか光に変身して戦ってるヤツらは体力なさそうじゃないですか。しかも、ティーチは長年生身で戦ってきてるんですから。殴り合いに自信あるでしょ。

 てことで、次の問題はティーチから逃げられるかどうか、に移ります。そして、逃げるのに最適なのは光の能力を持った黄猿なわけです。世界で一番速いのは光ですから。ところで、光が重力の塊から逃げられる半径というものは方程式で導き出されます。

 これはシュバルツシルト半径って呼ばれるものです。ようするに、こんくらいの重力だったら、光の速度でここまでなら逃げられるけど、ここを越すと光でも逃げられなくなるって距離です。ティーチと黄猿が戦うことで、シュバルツシルト半径が導き出されます。

 そして、黄猿以上の速度で動けるキャラは存在しないわけです。つまり、ティーチから逃げるための最大限の距離というのが算出できます。というわけで、黄猿がかませ犬となることで、ティーチの脅威を存分に印象付けることができるわけなのです。

 黄猿はかませ犬として設定されているキャラなわけです。たぶん、これからティーチにやられてしまうのです。だからこそ、後々でティーチの恐ろしさを印象付けるために、黄猿が光の能力でもって暴れまわっているのです。たぶん。
21:18 | トラックバック(0) | コメント(17) | マンガ | Page Top


■2008/08/13(水) マンガにおける速度の限界 (『ワンピース』ネタバレ) このエントリーを含むはてなブックマーク


ONE PIECE:尾田栄一郎


 50巻も出てる『ワンピース』なんですが、未だ終わる気配を見せず、ジャンプで元気に連載してます。で、そこに黄猿っておっさんが出てます。『北の国から』の田中邦衛みたいな、のんびり口調のおっさんです。このおっさん、海軍本部最高戦力とかいって、ようするに、ムチャクチャ強い。

 『ワンピース』では、強いヤツは、みんな、なぜか悪魔の実を食ってます。食ったら泳げなくなるんですけど、みんな、気にしないらしいです。黄猿も悪魔の実を食ってるらしくて、光に変身します。きっと「ピカピカの実」とか、ピカチュウぽいのを食べたんだと思います。

 光って、メッチャクチャ早いです。一秒で地球を七回半回るんですよ、光って。俺なんか、新幹線で一時間かけても静岡がやっとなのに。ほんで、早けりゃ早いほど、衝撃は強いです。だって、時速10キロの車と時速100キロの車だったら、100キロの方が痛いでしょ。

 で、ですね。黄猿の強さを説明するためには、光がどんだけ早くて、どんだけ痛いかっていうことをマンガで描かなきゃいけないわけです。だから、尾田栄一郎先生はものすごく頑張って、黄猿の速さや強さを描こうとしてます。

 右上の1コマ目では、瞬く間に黄猿が消え去ってます。2コマ目で、目の前に突然おっさんが現れます。3コマ目は、顔のまん前に足があるのに、全然反応ができてない様子。4コマ目では、でっかいコマを使うことによって、ものすごい衝撃があるってのを出してます。

 でも、全然、遅いんですよ。いや、マンガの中は、ものすごい早く進んでます。なにせ、光の速度。でも、それを見る我々、読者の視点から見ると、ものすごく遅い。ゆっくりゆっくり戦ってるように見えます。うっかりすると、時間が止まってるようなのです。

 これ、『ブリーチ』だったら、2コマで終わっちゃってるんですよ。気がついたら背後にいる、ってアレです。ものすごい速さを描くのは、アレ以外にはないんです。前にいたはずなのに、後ろにいる。目にも留まらぬ速さを描くのに、アレ以上はない。

 逆にいえば、「目にも留まらぬ速さ」以上の速さを描くためには、もっと別の表現をしなきゃいけない。いきなり、後ろに現れる以上の描き方しないと、「速い!」って感じが出ないんです。ところが、それをやろうとすると、コマがいっぱいいる。コマをいっぱい使うと、読者には遅く見えちゃいます。

 ちょっと難しく書くと、マンガってのはコマを使って時間と空間を描くわけです。時間というのはマンガのキャラの時間であるのと同時に、マンガの読者の時間でもあります。これらは本質的にイコールじゃないんですけど、読者にとってはイコールと錯覚させられるものでもあるんです。

 読者っていうのは、大きかろうと小さかろうと、一個のコマを読むのに時間がかかります。その時間がマンガの中でも流れている、ちょっと時間が進んでいるっていう気分になるのです。だから、コマをたくさん使って説明すればするほど、どんどん遅くなっていくのです。

 『ワンピース』における黄猿っていうキャラは、マンガ表現の限界に対する挑戦って感じなのです。そんな限界をしてまでも、黄猿を出さなきゃいけない理由ってのが、『ワンピース』にはあるんです。それは明日にでも。
22:36 | トラックバック(0) | コメント(5) | マンガ | Page Top


■2008/08/12(火) 夏! に読みたいマンガ特集 このエントリーを含むはてなブックマーク

 夏に読みたい、夏だから100%楽しめるマンガを特集してみたい。暑い暑い太陽からのお告げです。もしくは、真夏で、室内なのに、32℃を下回ることのない俺の部屋の呪いです。パソコンの廃熱板で玉子焼けます。

よつばと! (1)
よつばと!:あずまきよひこ


 まずは、なんといっても、『よつばと!』。永遠の夏休みなんじゃないか、とウワサされたあずまきよひこの名作です。ちいちゃな女の子が夏の日に大暴れする、ステキなマンガです。神社でセミとったり、浴衣を着てお祭りに行ったりします。

 もう、表紙からして「夏!」って感じですね。だって、ひまわりですよ、ひまわり。世界で一番夏らしい花ナンバーワンですよ。そんなひまわりを両手いっぱいに抱えて、しかも、根っこに土がついたまま。どんだけ夏? って感じじゃないすか。

KUNIE 1―パンゲアの娘 (1)
KUNIE ―パンゲアの娘:ゆうきまさみ


 ちょっとマイナーですけど、ゆうきまさみの『KUNIE』も「夏!」って感じの良作です。平凡な小学生アキラのところに、南の島からお嫁さんがやってきます。褐色の肌に能天気な性格の南国娘クニエには、実は大きな謎が隠されていたのです。

 こちらも、時間設定はずっと夏です。全5巻なんですけど、夏に始まって夏に終わります。親に隠れてちっちゃな恐竜を飼ってみたり、より硬いドロダンゴを競ったり。南の島に遊びに行った先で、世界を揺るがす大冒険をしてみたり。劇場版『ドラえもん』なところもありますね。

茄子 (1) (アフタヌーンKC (272))
茄子:黒田硫黄


 で、最後は黒田硫黄の『茄子』。別に夏をテーマにしてるわけでないんすけど、俺にとっては「夏!」って感じの一冊なんですよね。じゃあ、どんな内容かっていうと、茄子をテーマにした短編集。といっても、茄子は出てくるけど、話の主役は全然別。

 例えば、田舎で本ばっかり読んで暮らしているおっさん。おっさんは畑をやっていて、茄子が好き。何の因果か、道をフラフラしていた女の子を拾ってきて、ちょっと暮らす。とか。どこかの国の自転車レース。家の中までレース場になっていて、自転車が颯爽と駆け抜ける。

 まあ、ようするに、三冊とも、俺が「夏!」を感じるマンガです。春のマンガとか秋のマンガ、冬のマンガなんて考えてみると、ちょっと違った視点でマンガが読めて楽しいですよ。
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■2008/08/09(土) ジャンプ主人公の性格の変遷 このエントリーを含むはてなブックマーク

漫画の主人公の変遷:アルファルファモザイク

 ジャンプの主人公は外圧型から内在型に、物語は短期連続型から長期連載型に移り変わっているように思える。

 『ドラゴンボール』は努力して強くなる主人公である。山奥で育てられた少年・孫悟空は科学少女ブルマと出会い、世界中を股にかけた冒険を始める。中期から戦いをメインにした物語に転換し、天下一武道会やら地球の征服をたくらむ怪物、星々を植民地にする宇宙人や人造人間相手に死闘を繰り広げるに至る。

 舞台を宇宙に移すに当たって、孫悟空は宇宙でも名の知れた戦闘民族の一員であることが明かされる。しかし、それは明らかな後付け設定であり、基本的には孫悟空は努力することによって力を増していくヒーローとして描かれている。目の前の敵を撃破し、作品の人気がまだあれば新たな敵に取り組む。そして、敵の強さの臨界点を超えた時、「孫悟空は宇宙人だった」という設定が必要になった。

 最近の作品は違う。『ナルト』を例に考えてみる。忍者の里に生まれたナルトは、里の長を目指す少年である。その身には巨大な狐の妖怪である九尾の狐が封印されており、それゆえにナルトは他の忍者の何十倍、何百倍ものエネルギーを操ることができる。ナルトの強さの理由は努力ではなく、生まれつきのものとして規定されている。

 もちろん、『ナルト』には修行シーンもあり、主人公であるナルトが努力する姿も描かれる。だが、しばしば九尾の狐の妖力が暴走し、巨大な力を振るう様子を見ても、ナルトの強さの源泉が生来のものに規定されていることは間違いない。『ナルト』は非常に長期の視点に立った作品であり、開始前に長大なストーリーとなることは想定されていただろう。だから、九尾の狐を初期から設定できた。

 つまり、ジャンプに連載される作品は短期的なものから長期的なものに切り替わっている。人気がなかったらキラれる点では変わっていないが、長期に渡った時、より自然にストーリーが続くように作り上げられている。それゆえに、強さの源泉も努力などではなく、生来のものとして設定される。

 この変化によって、主人公の性格も規定される側面があるのではないか。孫悟空とナルトの性格は分類として同じカテゴリーに含められるものと思えるが、そこには微妙な違いが表われている。孫悟空は努力によって強いと規定されるため屈託を持たないが、生来の力を持つナルトはストーリー上、複雑な心情を抱かざるを得ないからである。
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■2008/08/08(金) 「目は口ほどにものを言う」表現 このエントリーを含むはてなブックマーク

 現実にいる我々が感情を把握するのは、なんでしょう。僕が思うに、怒ってる人って雰囲気が怒ってますよね。竹中直人さんのネタに「笑いながら怒る人」というのがありますけど、人間が怒ってたら端々の仕草で伝わるものだと思うんです。

 仮に仕草で分からなかった場合、きっと、声で分かります。人間って、機嫌が良いと、声もウキウキするじゃないですか。オクターブ上がるほどではないかもですけど、それくらいに高い声になります。朗らかに楽しそうな声になるものです。

 ところが、マンガで仕草や声を表すのは、メチャクチャ難しいです。マンガは動きを表現するのに、変化前と後の2コマを必要とします。音を表現できないので、声は文字で表すことになります。でも、文字の描き方で声の変化を出すのは至難の技です。

 だから、表情がとても重要になってきます。キャラクターが笑ったり、怒ったり、悲しんだり。そういう気持ちの変化を表現する時は、キャラクターの顔によって表現することになります。その顔の中でも、特に、重要な部分が目元なのです。


たかまれ! タカマル:近藤るるる


 こちら、『たかまれ! タカマル』の15巻からです。体がでっかくて、ちょいと乱暴な鬼島少年。高校で雑誌を作っているSMLという部活に仮入部した鬼島君は、小さくて可愛い、百刈先輩に恋焦がれてしまいます。とある目的のためにSMLに潜入した鬼島君は、目的と恋心のどっちをどうしたものか、迷っちゃうのです。

 可愛い可愛い百刈先輩に骨抜きにされてる上の顔、目的のために自分を叱咤する下の顔。点描と効果線の力もありますけど、ほとんど目と眉だけしか描かれていないのに、見事に表情の変化を表しています。

 マンガにおいては、キャラクターの感情を表現するために、まさに「目は口ほどにものを言う」のですね。
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